※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)

パイロープ  pyrope  Mg3Al2(SiO4)3  [戻る

等軸晶系  等方体  n=1.72〜1.77程度(Mgの代わりにFe・Caが固溶すると高くなる。一方,Mnはあまり含まない)

色:無色。Feが固溶すると赤みを帯びる。

へき開:認められない。

双晶:認められない。

累帯構造:アルマンディンと累帯構造をなす場合があり,パイロープ成分に富む部分は無色あるいは無色に近く,アルマンディン成分に富む部分はかなり赤みを帯びる。

産状:イオン半径の小さいMg2+が8個の酸素原子に配位されており(8配位),高圧鉱物。

パイロープが散点状に含まれるかんらん岩は,ざくろ石かんらん岩といい,クロムスピネルを含む通常のかんらん岩よりも地下深部(地下約100〜300qの超高圧条件)に存在し,そのような超高圧下ではCr・Alはパイロープに結晶化するため,クロムスピネルはあまり存在しない。ざくろ石かんらん岩は主に大陸プレート同士の衝突帯の狭い範囲に露出する。パイロープはキンバレー岩にもしばしば粒状や破砕片で見られ,これはキンバレー岩中にざくろ石かんらん岩の岩片を伴うことから,地下深部での爆発によるざくろ石かんらん岩からの分離物の場合もあると考えられる。これらの火成岩中のパイロープはパイロープ成分が約60〜70%程度で,時に数〜10wt%のCr2O3を含み肉眼で紫色が強いものがある(knorringiteとの中間体)。なお,ざくろ石かんらん岩中のパイロープは,地表への上昇過程で減圧し,周囲のかんらん石などの成分と反応し,緑泥石・輝石類・角閃石類・クロムスピネルなどのコロナ状の反応縁が生じていることも多い(ケリファイト)。

変成岩では大陸プレート同士の衝突帯の超高圧変成岩(エクロジャイトの一種)に産し,結晶内部にコーサイトまたはコーサイト後の石英の仮像を包有することがあり,コーサイト→石英の相転移時の体積膨張で周囲のパイロープに顕著な放射状の亀裂が生じている(その相転移後の石英はクロスニコルで集片組織をなす)。なお,環太平洋造山帯などの海洋プレートの沈み込みに伴うエクロジャイト中のざくろ石はパイロープ組成に入るものはまれで(パイロープ成分はおよそ20〜40%の範囲),そのざくろ石の大部分はアルマンディン組成の範囲内である(グロッシュラー成分は10〜20%程度)。




ざくろ石かんらん岩中のパイロープ 
ノルウェー西海岸のカレドニア造山帯
Pyr:パイロープ,Ol:かんらん石,Di:透輝石,En:頑火輝石,Cr:クロムスピネル,Amp:角閃石類

淡紅色大粒状で視野に入りきらない場合も多い。初成的なざくろ石かんらん岩の鉱物組み合わせは主にパイロープ・かんらん石・透輝石・頑火輝石だが,地表への上昇過程(減圧過程)で多少なりともパイロープの周囲はかんらん石などの成分と反応し,緑色の角閃石類や黒色不透明微粒集合体のクロムスピネルなどからなる反応縁(ケリファイト)になっている。ケリファイトは輝石類や緑泥石類などからなる場合も多く,それらはパイロープを針状集合体で取り巻いてコロナ状集合体をなすことも多い。